Interview

試行錯誤の先にたどり着いた形|自分のための絵から人のための絵へ

アクリル絵の具で、動物をモチーフにした作品を中心に描くBAEZ3さん。様々な画材を組み合わせて表現されています。
どのようなこだわりや想いで描かれているのか。BAEZ3さんにお話を伺いました。

アクリル絵の具と出会うまで

ー絵を描き始めたきっかけを教えてください。
きっかけは、部屋に絵を飾りたいと思ったことですね。最初は誰かが描いた絵を買おうかなと思っていたんですが、自分で描いた方が面白いんじゃないかなと、中学生以来10年以上ぶりに絵を描き始めました。

立体感のあるようなゴツゴツした感じを描きたいなと、最初は油彩を選びました。絵の具は油彩と水彩しか知らなかったのと、巨匠が描く絵に油絵が多いので、絵といえば迫力のある油彩画のイメージもあって。

ただ、初心者用の本をちょっと見ただけで描いていたので、重ね塗りとか、油と絵の具の配合とか全然分からなくて。扱いも大変なので自分には向かないなと、一旦絵を描くことをやめました。結局、1枚だけ描いたあと、油絵の具は全部捨てましたね。

ー思い切りましたね。
そうですね。そのあと半年か1年後ぐらいに、やっぱり絵を描こうとかなともう一度思い始めて、改めて画材を揃えに行ったんですよ。この時に、アクリル絵の具と出会いました。店員さんに聞いたら、油絵の具と水彩絵の具の両方に近い描き方ができるし、乾くのも早いと言われたので、これは良いんじゃないかなと。

結果としてアクリル絵の具が1番自分に合っていたので、今は基本アクリルで描いています。

水彩やパステルは、自分が描きたい雰囲気にちょっと合わないので、部分的に使用するぐらいですね。雰囲気が優しすぎてしまって迫力がなかなか出せなくて。ドーンと存在感のある絵を描きたい自分には、合わないかなと思っています。優しい雰囲気の絵を飾りたい方にとっては良いと思うんですけどね。

試行錯誤の先に見つけた自分の絵の形

ー絵はどのように学ばれたのですか?
独学でYouTubeを観たり雑誌を読んだりしつつ、美大生に教えてもらうこともありましたね。当時バンドを組んで音楽活動をしていたんですが、ライブハウスに美大生が通ってくれていたので、そういう方たちに直接指導してもらっていました。

ただ、自分より絵が上手い人はたくさんいるので、他の人と同じことをしていてもダメだろうなというのは頭にありました。なので、自分の絵の形を探すために、色んな画材や描き方を試していましたね。

画材は絵の具だけじゃなくて、ペンキや樹脂絵の具、スプレーや、艶の有無が違う絵の具を使ったり。ペンキやクレパスを使ったり混ぜてみたりもしていました。

 

様々な画材を用いて制作された作品(作品名:【About A Girl】キャンバスF6号)

絵の描き方は、西洋画っぽい感じで描いたり、モノクロの作品を描いてみたり、水彩っぽく描いてみたりと、色々試していました。今は全然違う、ポップな感じで描いているんですけどね。

新しいことに挑戦し始めの頃は、画材と描き方を組み合わせて試行錯誤していたんですが、なかなか上手く描けなくて。イメージ通りにならないことばかりだったので、納得のいく組み合わせを探す日々でしたね。色んな描き方を試しながら、ようやく自分らしい描き方を見つけられました。

ー絵を描くときのこだわりを教えてください。
特に技法で一番今重要視してるのが、インプリマトゥーラという下塗りの技術ですね。西洋画では基本となっている、有色の下地を塗る技術があるんですが、YouTubeで画家の方が紹介していたのを観て知ったんですよ。下地に色がある分奥行きも出るので、これは良いなと思って取り入れました。

それを習得してからは、一気に自分の作品の形ができたなと思います。

あとは、キャンバスの下地にジェッソを必ず塗るんですよね。最初の頃は、ハケで塗ってやすりをかけてまたハケで塗って・・・というのを繰り返していたんですが、左官業をやっていたことがあるので、ジェッソをコテで塗ったらどうなるんだろうと思いついて。試しにコテを使ってみたら、やすりをかけなくても綺麗に平らな状態にできたので、必ずコテを使って描くようにしています。

人のために描く絵

ー仕事で培った技術が活かされたんですね。気持ちの面でのこだわりはありますか?
絵に魂は込めないようにしているということですね。自分の描いている絵は、基本的に人の手に渡るものなので、絵を飾る人自身にイメージしてもらうのが好きなんです。なので、誰かのための作品に対して、「ここはこうで・・・」という強い気持ちや魂を込めた絵にはしたくないと思っています。受け取った側が感じてくれるものが1番なので。

絵を描き始めてから2〜3年ぐらい経って、どこかで自分の絵を発信したくて、SNSに作品を載せていたんですよ。そのうちに、「良いですね」って言ってくれる人がだんだん増えて、「買いたいです」って連絡をくださる方まで現れて。

その時は、自分の作品を売るという認識がなかったので「売らないです」って言っていたんですよね。描き始めの頃って、一つ作品が完成することがもう奇跡のようなことだったんです。こんなに上手く描けるんだ、みたいな感動が毎回あって、絶対作品を手元に残しておきたいという感覚があったので。

でも、どうしても買いたいと言ってくださったので、これだけ欲しがってくれる人がいるならと販売を開始したんですが、その頃から「人のために描く絵」というのを意識するようになりました。

ー構図やモチーフは、どのように決められているのでしょうか。
いろんな画像を見て、この角度いいなこの表情いいなとか、そういうのを見て描きますね。参考になるものを見たり、空想で「こういうのいいんじゃないかな」とひらめいたり。「この犬を可愛くしたい」「もっと迫力のある絵にしたい」と思う時に、良い構図が浮かびますね。

オーダーを受ける時は、できるだけ写真を送ってもらって、その中で1番いい表情のものを選んで描くようにしています。良い表情で描けると、その分その絵を飾ってくれる人にとっても良いものになるので。

モチーフを犬にしているのは、色々試している中で描くのは動物が良いなと思ったからですね。元々猫派だったんですけど、犬の方が種類豊富なので、色んな種類の犬を描いてみているうちに好きになりました。それからは犬のモチーフが多くなっています。

作品名:Seep

様々な人から吸収した技術で自分の絵を進化させる

ー影響を受けたアーティストはいますか?
ミュージシャンのボブ・ディランという人の影響を受けていました。彼はミュージシャンとして活動しつつ絵も描いていて、自分も絵を描いてみようかなと思ったきっかけの一つになりました。あとは絵の一部として描いている王冠もそうですし、サインの王冠とかを描いているのは、バスキアの影響も受けています。

好きなのはジャクソン・ポロックですね。描いている姿もかっこいいですし、本物の作品の迫力もすごかったです。

絵を描き始めた頃は、正直ゴッホとピカソしか知らなかったんですけど、今は色んな人の作品を見て勉強しています。有名かどうかに関わらず、良いと思った作品があれば、その技術を学んで自分のものにしていくような感じです。

自分のイメージの絵を描きながらも、キャンバスの中には色んな人の影響を受けながら様々なものを取り入れているので、自分の絵は常に進化していると思います。

ー今後挑戦してみたいことがあれば教えてください。
15年ぐらい絵を描いているんですが、一度も公募に出したことがないんですよね。なので、公募に出してみたいなという気持ちが強いです。

個展は、去年初めてやったんですが、やっぱり準備とかが大変で。人との繋がりが増えるのは良いなと思いつつ、今はSNSでも繋がることはあるので、なかなか積極的にやろうという感じにはなれなくて(笑)。色々お声がけはいただいているんですが、まずは公募への出展に注力できたらなと思います。

 

BAEZ3

BAEZ3

自分の部屋に飾る絵を描くために、絵を描き始める。一度絵を描くことから離れたものの、アクリル絵の具に出会い、アーティストとして活動。「人のために描く」ことを意識しながら、制作し続けている。

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