Interview

絵を描き続けていく覚悟|なるべく多くの作品を発表していきたい

アクリル絵の具などを用いて表現される、はまだ みわさん。表情豊かで、今にも動き出しそうな動物たちを描かれています。

どのような経験やきっかけで今に至るのか。はまだ みわさんにお話を伺いました。

専門学校で出会った新しい世界

ー絵を描き始めたきっかけを教えてください。

子供の時から絵を描くことが好きだったというのは、他の作家さんたちと同じだと思います。ただ、私の場合は「遊びのひとつとして絵を描くのが好きな子供」という程度で。当然その頃は画材など持っていなくて、ただ新聞に入っている折り込み広告の裏に鉛筆で落書きしたり、道にろう石で絵を描いたりしていました。

絵を観ることについても、当時「美術館に行って鑑賞する」という機会はほとんどありませんでした。それでも、自分が触れられる範囲の中で、芸術作品に親しみを持っていた記憶はあります。幼少期に通っていたエレクトーン教室で見たゴヤの絵、学校の音楽室に飾ってあった音楽家の肖像画だったり、母が与えてくれていた少女漫画誌だったり。図工室にあったフランス画家の油彩肖像画の複製画に、憧れを抱いたりもしました。子供ながらそういうものに惹かれているという実感は確かにありましたね。

それから、高校生ぐらいになったとき、母に「画材が欲しい」と言った記憶があります。画材屋さんに連れて行ってもらって、パステルのセット・ペリカンの固形絵の具セット・絵筆・スケッチブックを買ってもらいました。

この時パステルを選んだ理由は、多分ガラスのショーケースに展示してあったパステルがとても美しかったからですね。ただ、それを大事にしていたものの、結局使い方が分からなくて放置したままずいぶん時が流れてしまいました(笑)。

今思えば、中学校の頃に美術部へ入部すれば良かったなと思うんですけど、当時の私にその選択肢はなくて。また、高校生の時は受験のことで余裕がなくて、やりたい事を我慢している間に大人になってしまいました。

大学では語学を専攻しましたが、「やっぱり絵を描きたい」という欲求が常にありましたね。デッサン技法も知らずに自宅で自画像を描いてみたり、友人に送る年賀状に1枚1枚絵を描いてみたりと、とにかく「何か機会があればイラストを描く」ということを自然とやっていました。

実は、通信講座に申し込んだこともあったんですが、挫折してお金だけ払って辞めるというお恥ずかしい過去もあります(笑)。

ー最初の一歩が難しいですよね。本格的に描き始められたのはいつ頃からだったんですか?

本格的に学び始めたのは、社会人になってからです。大阪のアートスクールへ通っていました。そこで自分と同じように社会人でありながら、真剣に絵を学ぶ方々に出会ったので、すごくモチベーションが上がりましたね。

最初はイラストコースへ通って、「描きたい」と思っていた気持ちをぶつけるような感じで自由に描いてたんですよ。ただ、基礎的な力や技術に関して悩んでいたので、絵画コースで基礎からやり直しました。同時に、絵本に興味を持ったのもこの頃です。拙いながら絵本制作にも挑戦しました。

当時制作された絵本

アートスクールでは、同じ志を持った生徒さんや第一線で活躍しておられる講師の方々にたくさん刺激を受けましたね。

ー絵画コースに変更されてからは、ずっとそこで学んでいらしたのでしょうか?

アートスクールはトータル6年ぐらい通っていましたね。私が師事していた先生に「デッサンに関してはもう教えることはない」と言われたのを区切りに、修了しました。

絵を描く技術の基本を学んだ後は、際限なく自分で技術を研鑽していくしかないんですよね。それと併せて、自分が表現するものは、自分自身が感じていることや、対象から感じとるものなので、自分の内面も磨いていかなければならないとも感じています。

美しいものや面白いものを生み出すために、自分が何かを心から美しい、面白いと感じる素直さと、そして世の中の美しいもの、面白いものに気付ける敏感さを持ちたいと思います。

「好き」の掛け合わせで目指し始めた絵本作家

ー絵本作家を目指されたきっかけは?

アートスクールにたくさんの書籍や参考書みたいなのが置いてあったのですが、そこで見たボローニャ展の図録に衝撃を受けました。海外の作家さんのセンスの良さや技術が素晴らしいなと驚き、同時に絵本の可能性に気づいたんです。。

私は文字の読み書きにも親しみを持っているので、それなら文章と絵で構成されている「絵本」がいいじゃないかと。それをきっかけに、絵本教室に通ったり、公募に応募したりと、絵本作家になるための活動を始めました。

ただ、日本の絵本出版業界のことを全く知らなかったので、プロになるには何を求められているのかが分からなくて、困りました。一般に「絵本は子供のため」だと見なされているんですが、私は絵本を「美しい画集」のように捉えていたんですよね。

でも、今は「子供がその世界に入って遊ぶもの」として捉えることができるようになったので、試行錯誤で創作しながら、子供の心を探求し続けています。

今のところ、活動成果としては過去3冊の絵本出版ですね。今後の目標は、子供が大笑いするような面白い絵本を作ることです。

出版された3冊の絵本

ー絵本教室ではどのようなことを学ばれたのでしょうか?

最初に、基本的な絵本作りのルールを教わりましたね。基本的なところだと、絵本の進行方向や、絵本を開いたときの真ん中にある「ノド」に大事な絵を描いてはいけない、などの決まり事です。

その後、自分でストーリーを作ることができれば、講師の絵本作家さんや編集者に自分の作品について講評をいただけるので、それを元に改善して、作品を完成させていきます。

絵本制作の難しさは、『子供たちが面白いと思うもの』をどうやって作るかということなんですよね。大人になってしまった自分が、今の子供たちと同じ目線に立って、「本当に面白い」と笑える世界を描くことが、私には何より難しく感じていて。時代を超えて、普遍的に面白い世界を創りたいと思っています。

ーアクリルをメインで使うようになったのはなぜでしょうか。

最初は、昔に見た海外の画家の肖像画に魅せられて憧れていた、油彩画から始めたんですよね。ただ、やっぱり乾きが遅い分管理が大変でした。乾いたと思って作品を重ねていたら、丹精込めて描いた絵が台無しになってしまったんですよね。絵本を描くにも不向きなので、油彩画に似た特徴を持っていて乾きの早い、アクリル絵の具を使うようになりました。

画材は色々と試しましたが、絵本作りの時は、思い切り描き進めていくことができるアクリルガッシュが最適だと感じましたね。修正も、比較的容易というのも良くて。

私が求める絵本の絵は、描かれているものが命を持っているような、そこから出てきて動き出しそうな存在感なんですよね。ガシッと色がのって、存在感がある絵の趣が、「描いたぞ~!」という満足感を与えてくれます。

今にも動き出しそうな作品作り

ー絵を描くときのこだわりはありますか?

絵本以外のイラストは、「見た人が明るい気持ちになってくれたら良いな」という気持ちで描いています。色んな画風やテーマで「表現すること」に挑戦していて。自分が楽しんで描いたものに「ハッピーな気持ち」が宿って、飾ってくださる方にそのハッピーが伝わったらいいなと思います。

「絵」というものの力を信じているんですよね。何もない白い壁の部屋もいいけれど、そこに絵が一枚あるだけで、心が色や風景、物語に染まるような変化が生まれる。また、絵は写真と違って、現実にないものや、心の中を描き出してくれる面白さがあります。現実を模写するスケッチもよし、心象風景のスケッチもよし。ある個人の手を通して生まれた世界の面白さを見せてくれる絵画というものに魅力を感じます。

作品名:デンデンタクシー

ー今後挑戦してみたいことはありますか?

新たな絵本を作ることが、その都度大きな挑戦ですね。一枚の絵を描くことも、私には新たなる挑戦で。その世界が描けるのかどうか、試されている気持ちです。日々はその繰り返しで、その積み重ねで自分の人生が構成されていくのかなと実感しています。

はまだ みわ

はまだ みわ

社会人からアートスクールに通い、基礎から絵を学び始める。スクールで出会った図録をきっかけに、絵本作家を目指すように。観る人を笑顔にするような作品作りを目指している。

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