Interview

明るさや希望を表現したい|身近な風景や想い出を描いていく

アクリル絵の具を用いて、自然や風景を描かれるノムラニニコさん。明るい世界を表現されています。
どのような経験やこだわりから作品を描かれているのか。ノムラニニコさんにお話を伺いました。

人から譲り受けた絵の具から始まった制作

ー絵を描き始められたきっかけを教えてください。
絵を描き始めたきっかけとして一番大きいのは、社会人になってから知り合った女の子にアクリル絵の具をもらったことかもしれないです。

お互い学生の頃デザイン科に通っていたことで意気投合した子がネイルアートをやっていたんですけど、余っているアクリル絵の具をいただけるという話になったんですよね。当時はジェルネイルとかもない時代だったので、ネイルアートというとアクリル絵の具を使うこともあったようですが、白色だけあれば良いから!ということで、他の色の絵の具をいただいて。絵の具って高いものですし、せっかくもらったのなら何かに使おうと、絵を描き始めました。

それまでは、絵を描くことから遠ざかっていたんですが、絵の具をもらった時はなぜか絵を描く気になって。学生の頃より楽しく描けたので、それからずっと描き続けて今に至ります。

ー絵を描くことが嫌になっていた時期があったのですね。
高校進学のとき、美術系か調理系か、職業に直結するような学校に行きたくて。漫画を描くのが好きという理由で美術科の高校を選んだんですけど、ひたすら絵を描き続ける日々が本当に大変で。特に美大進学を夢見ていたわけではなかったというのもあって、絵を描くことがすっかり嫌になってしまって。

授業はだいたい朝8時半から始まるんですけど、その前にデッサンを1時間ぐらいするんですよ。そのあと学科系の勉強をして、お昼からはまたデザインやデッサンの授業、という感じでした。途中から「絵を描きたい!」というよりは、 周りについていくので精一杯みたいになっていきましたね。

ーすごく大変な日々だったんですね。
今振り返ると絵画・デザインだけじゃなく彫塑・美術史・写真とか学ぶことができた貴重な高校生活だったんですけど、能力不足で何もかも全然ついていけませんでしたね。

高校卒業後は、関西の短大に進学することになったんですが、家やお店の図面を描いたりする製図系の学科だったので、高校で学んだような絵は全然描かなくなりました。

短大の授業では、先生から出された条件を元に図面を引くんですが、「京都の三条の川沿いにある2階建て店舗のデザインをしなさい」みたいなものもあれば、「生命が誕生する場をデザインしなさい」というのもあって。生命が誕生する場って、今大人になると産婦人科の部屋かなと思うんですけど、当時はみんなもっとロマンがある感じの図面を引いていましたね(笑)。

同じ科には美術系の学校出身の人はほとんどいなくて、普通科や、工業高校の建築科出身の人ばかりだったし、年齢もバラバラ、おしゃれな人が多くて、環境としては面白かったです。課題さえ出せたらあとは自由に、という感じだったのも良かったですね。

人生の想い出がモチーフに

ーアクリル絵の具をもらうまでに、使われたことはありましたか?
受験して落ちた大学があるんですけど、そこの受験会場で使ったのが初めてでした。課題がアクリル絵の具を使うものだったんですが、会場に1人1セットずつアクリル絵の具が置いてあったんですよ。

予備校に行っていた人に聞いていた話はポスターカラーを使った課題しか出ない、とかでしたし、高校のカリキュラムでもアクリル絵の具は扱わなかったので、こんなに便利なものがあるんだというのを試験会場で初めて知りました。

なので、特にどこかでアクリル絵の具の描き方を学ぶことはしていなくて、基本は自分の好きなように描いていますね。最近、YouTubeを観てちょっと違う描き方を学んだり試してみたりをし始めているところです。

グラスビーズを用いて描いた作品

ー描くモチーフはどうやって決めていますか?
「こんな風景を描いてみようかな」と思うものや、身の回りにある風景とかを描いています。

例えば、気球をモチーフにしている絵は、佐賀県で開催されるバルーンフェスに魅了されたからですね。親族が佐賀県で飲食店を営んでいるので、お店に飾る用に気球の絵を描いてプレゼントしたらすごく喜んでくれて。それをきっかけによく描いています。

メリーゴーランドは、独身時代に旅行で行ったフランスやオーストリアで見て感動した記憶から描いています。日本と違って、街中にドーンとあるので、目にする機会が多かったですし、印象的でした。

最近は、息子と近所の水族館に行ったり、グリーンフェスタみたいなのに行って植物をたくさん見たり。そういうお出かけのときに見たものや想い出を、記憶から呼び起こして描いています。

住んでいるところが結構観光地なので、モチーフにして描きたいものがたくさんあって。環境にも恵まれていると思います。

明るい気持ちになれる絵を描きたい

ー絵を描くときのこだわりがあれば教えてください。
世の中には、薄暗い事件とかつらい出来事がたくさんあると思うんですけど、その中でも明るさや希望を感じられるような絵を描きたいと思っています。

昔は、色は必ず混ぜて作ったものだけを使うようにしていたんですが、最近はチューブから出したままの色も使っています。手前と奥の距離感を表現したいときとか。手前の色を塗る時にチューブそのままの色を使うと、前に出ている感があるというか、奥行きが出るかなと思っています。

作品名:Make my future possibilities apparent

周りの人には「サインとか日付とか書いた方が良いんじゃないの」って言われるんですけど、誰が描いたか、ではなく作品自体を見てほしいですし、いつ描いた作品だとしても、いつまでも新鮮な気持ちで絵を見てもらいたいので、サインも日付もかかないようにしています。

ーあまり影を描かれていないイメージなのですが、これもこだわりですか?
確かに影はあんまり描かないですね。何故でしょう(笑)。下描きでは影を描いていても、色を塗っていくタイミングで、「この面にこの色はなくて良いかな」と思ってなくしているかもしれないです。

画面上で試行錯誤するので、上から重ね塗りできるアクリル絵の具が今のところ1番自分には合っているなと思っています。アクリル絵の具に出会えたのは、本当に人生の転機でした。

いつか自分の絵をパブリックスペースに描くことが夢

ー影響を受けているアーティストはいますか?
今はインスタとか色んな方の作品を見られる機会がたくさんあるので、様々な方の影響は受けていると思うんですけど、好きなのは山口晃さん、山本容子さんですね。

技術があってユニークで、時代の雰囲気にも合っているところ、現代的でありながら50年後100年後に見ても感動するような作品を描かれているところに惹かれます。

ー今後挑戦してみたいことはありますか?
人が通行するための大きなトンネルがあるんですが、そこを自分の絵で埋めてみたいという夢はあります。トンネルの全長が1km弱ぐらいあるので、描くのに発想力や技術だけじゃなく体力と気力が必要です。体を鍛えつつ(笑)夢は大きくもって、これからも製作を続けていきたいです。

ノムラニニコ

ノムラニニコ

大学受験の際に、アクリル絵の具に出会う。社会人になってアクリル絵の具を譲り受けたことをきっかけに、絵描き活動を開始。これまでの想い出を振り返りながら、生活に「彩り」を添えられるようなイラストを描き続けている。

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